【短編3】甘い罠〜12回のキス〜
「莉那(リナ)知ってる?ナオキ結婚したらしいよ?」
「へぇーそうなんだ」
周りの友達が家庭を築いていく。
あたしだって考えていないわけじゃない、でも
二人の「今」でさえ曖昧なのに、「未来」なんて
本当にあるの?
友達と別れた時には外は真っ暗で、何も見えない。
ヒールの音だけが響く帰り道、中学校の前で足を止めた。
この狭い世界にいた頃、何かもが輝いて見えた。
記憶を辿るように、そっと目を閉じた。