【完】*お引越しラバー*
「えっ!?伊奈ちゃん、平気なの!?」
「あっ…、はい」
もう大丈夫なのに、なんだか、泣きそうになった。
それに、ヒロさんは気づいたみたいで。
「……洸ちゃん。少し仕事抜けて良いから、伊奈ちゃんを送ってあげて?」
「…分かりました。伊奈ちゃん、行こう」
「は……」
怖かったのか、足が震えてる。
それに、松橋は気付いたみたい。
「ゆっくり歩く?それともお姫様だっ」
「歩けますからっ!!」
…やっぱり店を一歩でも出ると、普段通りなんだなぁ。
「ちぇーっ、 まぁ…ゆっくり帰ろうか」
「……はい。」
夏の終わりでも、夜の空はまだ明るく、二人で帰り道を歩き出した。
松橋が、そっと手を繋いできて。
あたしは、振り払うことが出来なかった。