†captivity†(休載)


数秒考えてから、今日ここに来た理由を思い出した。

あたしは決して知歌といつも通りのお買い物に来たわけではない。



「奏多くん!!」



思い出した拍子に振り向くと……知歌が見ていた方向に、壁に隠れた茶髪がちょっとだけ見える。

あれは、背丈からしても奏多くんだ。



あたしはそこに駆け寄って、壁の向こうを覗き込んだ。

すると、やっぱり奏多くん。

初めて会った時とちょっと似てるな、なんて思った。



「ごめんね、奏多くん。待ってた?」



こくん。



あぁ、正直だなぁ……。



「ごめんね。もうそろそろ決めちゃうね」



それとも、後は知歌に任せて行っちゃおうか?

知歌に任せて間違いは有り得ない。

昔からそうだから。



「奏多くん、プレゼントってすぐに必要?」



ふるふる。

首を振る奏多くん。



「そっか」



少し遠くであたしたちを見ていた知歌に向く。

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