†captivity†(休載)
──距離
あの日以来、一週間が経ってしまったけれど、東先輩には会えていない。
東先輩が帰ってしまった後、緒方先輩から少しだけ話を聞いた。
「悟はわかってんだよ、自分が逃げてるだけだってな」
「……」
「それでも信じることはトラウマになってんだ。お前が言った通り、盛大に裏切られたことがあったからな」
逃げてる、それが悪いことだとは思わない。
誰だって逃げたくなることがある。
あたしだってあった。
でも、全てから逃げたらだめだよ。
信じることが怖くても……壁なんて作っちゃったら、救えるものも救えない。
「緒方先輩、あたし、間違えましたか?」
でも、その考えが、あたしの考えが間違っていたら……あたしはまた、東先輩を傷つけて、さらに厚い壁を作らせてしまった。
──以前の『彼』に重ねてはいけなかった。
痛くて痛くて、それでも今は乗り越えられた。
東先輩にも、そうなってほしいと、思ってしまった。