†captivity†(休載)


わかっている上で、お互いこの会話だ。



「心配してたんだから」

「……」



東先輩は、ちゃんと考えて、結果が出たからここにいるんだと思うから。



東先輩は、バツの悪そうな顔をして、あたしから視線を逸らす。

まるでその姿は子供のようで……年相応に見えた。



拗ねてる。

東先輩が。

あの、毒舌鬼畜魔王の東先輩が、拗ねた。



その様子には、奏多くんも灯くんも驚いたようで、口をぽかんと開けている。



今日の東先輩はいろいろと貴重である。



「君は嫌いだ」

「あたしも割と東先輩のことは嫌いです」

「……なんで心も君も奏多も、お節介なんだろう。気持ちが悪いよ」



人の優しさを気持ち悪いと言ったぞ、この男。

まぁ、うん、そういう人なんだって知ってはいたけどね。



あたしは大きなため息とともに、頭を抱えた。

この人の性格がねじ曲がる前の姿を見てみたいわ。



あたしがそうして頭を抱えていると、東先輩が言葉を続ける。













「でも、この場所から離れる気はないんだ」



ポツリ、呟くようにそう言った。


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