†captivity†(休載)


にこっと笑って、奏多くん、灯くん、そして──東先輩に視線を移すと、困ったような表情で微笑していた。



「まぁ、悪くはないね」



そんな素直じゃないことを言う東先輩は、意外と悪魔の部分ばかりではないらしい。

ツンデレか。



「ところで……」



東先輩はあたしから視線を外して、奏多くん……いや、その隣にいる灯くんの方を向いていた。

一週間以上この教室に出入りしていたから、すっかり馴染んでいて忘れていた。

そういえば東先輩が来なくなった日くらいから灯くんも来るようになったから、東先輩はこのことを知らないんだった。



東先輩から、笑みが消える。



「なんでいるの」



そう、冷たい声色で言う、東先輩。

あたしと話している時より、1トーン下がった。



きっとこれが、『壁』なんだ。

東先輩のつくる、『壁』。



「悟先輩……」



灯くんの声は、不安、それに少しの期待を含んでいた。



「……答えろ」

「東先輩、言ってなくてすみません、あたしが──」

「君は黙ってて」

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