†captivity†(休載)


「悟先輩」



彼はきっと、ずっとずっと、心配していたんだ。

この中の誰よりも、きっと。



「俺、悟先輩の力になりたかったんです」

「……なれないよ」

「力になれなくても、背負ってるもの、少しでも軽くしたいって、思ってました」

「嘘」

「嘘じゃないです」

「それならただの偽善者だ」

「なに言われても、今度は逃げないです」



東先輩の視線が落ちる。

なにかを考えているのか、それとも思い出しているのか、わからない。



でも、東先輩は灯くんをきっと突き放すことはしない。

なんとなく、そう思った。



「藤崎さん」

「……え、あ、はい?」



いきなり話をあたしにふられて、驚いて反応が遅れてしまった。

ひさしぶりに東先輩からあたしの名前が出てきた気がする。



「君でしょ、またお節介してるの」

「え、ち、違いますってば!奏多くんですよ」



3分の1くらいはあたしかもしれないけれど、あえて伏せておこうか。

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