†captivity†(休載)


なに、なにしてるの、この人。

少し離れたと思ったら、吐息が首を掠め、痛みが走った場所がだんだんひんやりと冷たくなる。

そしてあたしは悟った。

噛まれたのか……?



冷たくなったのは、唾液のせいだと思う──なんてなぜか冷静に考えていたら、あたたかいものが、ぬるっと、首を撫でた。

というか、舐められた……のか?



ゾワリ、刺激が背中にまで走った。



そこでようやく顔を離した緒方先輩をガン見。



「ふっ、真っ赤だな」



どことなく、さっきよりも機嫌がいいような気がする。



「……なに、するんですか」

「味見」

「な……!?」



味見、だと!?

なんの!?

なんの味見!?



「ば、バカです!緒方先輩のバカ!あたしもう行きますからね!」

「……あー、まぁ、そうだったな」



あたしはカバンをひっつかむと、玄関に向かってまっしぐら。

振り向かない。

絶対に。



「送る」

「ひょえ!?」



振り向かなかったから、真後ろからついて来ていた緒方先輩に気付かなかった。



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