†captivity†(休載)
「知歌」
あたしに抱き締められたら知歌は、はっとして顔を上げた。
「……ごめん、また変になってた。もう大丈夫だと思ってたのに」
「いいよ。大丈夫。知歌が安心できたなら、それでいいの」
「……そっか」
きっと、知歌の心は不安でいっぱいだったんだ。
あたしはそれをわかってあげなきゃいけなかった。
そっと、知歌の頭を撫でる。
乗り越えた上で、立ちはだかる壁を、いつかこの手で壊してあげたい。
産まれた時から、あたしと知歌はずっと一緒だった。
でも……中学に上がる頃にはお互い別の友達付き合いがあって、だんだん一緒にいる時間は減っていった。
同じ学校には通っていたけれど、別行動が増えてきて──あの事件の後からは、離れる時間が少なくなった。
思い出したくもない、過去だ。
忘れてはいけない、過去だ。
「和歌」
「なに」
「……ごめん」
……違うよ、知歌。
あたしが、悪いんだよ。
全部全部、あたしのせいなんだよ。
「和歌の大切な時間、壊したよね」
そう言って、知歌はニヤリとした笑みを見せた。