†captivity†(休載)
──自分の心
――なにが起きたのか。
それは一瞬の出来事で、気付いたら彼の背中を追うように走っていた。
緒方先輩に掴まれていた手首が、まだ熱を持っている。
灯くんの、意外と広い背中をみながら、どこへ連れて行かれるのかもわからず、ただ引かれるままに走る。
彼はいつの間に、あんなにも近くにいて、緒方先輩の手を振り解かせてくれたのか。
不意をつかれた先輩は、突然割り込んだ灯くんに思わず手がゆるんだのだろう。
そして彼はあたしを攫う。
ただひたすらに、走って逃げた。
着いた先は、学校の玄関。
あたしは鞄を受け取っていたし、灯くんも持っていた。
どうやらこのまま帰るらしい。
「灯くん……」
「このまま逃げたいけどさ、さすがに靴履き替えなきゃだよね」
「とも──」
「どこ行こうか?カフェ?遊園地?それとも公園?」
「……と」
「俺奏多の家行くからあんまり時間ないけど」
「……」
聞けよ。