†captivity†(休載)
でも結局。
「行こう」
そう言って手を引かれるのを拒否することは出来なかった。
着いた先は、公園だった。
それも──あの子供の頃の夏の日、名前を忘れてしまった彼と会った公園だった。
確かに覚えている、時々夢に出てくる彼。
大きなリュックを抱えて、あのベンチに座っていた、メガネの家出少年。
以前はまた会えることを期待して、知歌と何度もこの公園へ足を運んでいた。
でも何年経っても結局会えなかったから、諦めてしまった。
ここへ来たのは……中学一年以来だ。
「和歌、座ろ」
そう言ってベンチに座った彼は、あの日彼が座ったのと同じ場所に座った。
そのせいなのか何なのか、あの日のことがチラチラと頭をよぎる。
あの子と灯くんが、重なる。
「和歌……?」
「え、あ、うん」
灯くんの隣に、あたしも座った。
『和歌の家って、どんなの?』
ふと、あの時の会話を思い出した。
10年近く前の話なのに……おかしいな。
『僕は、失敗作だったから』
そう言っていたあの男の子は、今どうしているのだろう。