†captivity†(休載)
「……か、和歌!」
「え!?」
「あ、戻ってきた」
あたしに声をかけていたらしい灯くんに、気づかなかった。
ここにいると、どうしてもあの子を思い出してしまう。
そういえば知歌にも言われてた。
和歌はここに来ると意識がどっかに飛んでっちゃうって。
「ごめん灯くん。ちょっと考え事しちゃってた」
「大丈夫だけど……考え事って緒方先輩?」
「は……?」
あたしは驚いて固まった。
灯くんはそんなことを考えていたのか。
でも確かにさっきまで緒方先輩と一緒にいたし、首のマークもあるし、そう考えるのも無理ないかもしれない。
「違うよ、緒方先輩のことなんて考えてないって」
「本当に?後悔してない?……って言っても俺が引っ張ってきちゃったんだけどね」
「後悔する意味が分からないよあたし別に緒方先輩のこと好きじゃないし」
好きじゃない。
大丈夫、あたしは緒方先輩のことなんて好きじゃない。
ハッキリ灯くんに言えたんだから、あたしの気持ちは緒方先輩に向いてるはずがない。
自分にそう言い聞かせるように、否定した。