†captivity†(休載)


「じゃあなに考えてたの?」



そう切り返してきた灯くんに、言おうかどうか迷いが出た。

恥ずかしい。

いつまでもあの日のこと……家出少年に出会ったことを覚えているなんて、なんだかおかしく思えて。



……でもこのまま「なんでもない」で済む気がしない。

それに、少し……客観的な意見が聞いてみたいと思った。

いつまでもズルズルと引きずっているこの気持ちは一体なんなのか。



あたしはあの日のことを少し話してみることにした。

知歌に話した以来、誰にも話したことのなかった、彼の話。



「小さい頃、確か小学2年の夏だったかな、ここで家出少年と会ったことがあって」

「家出少年?」

「おかしいでしょ。普通家出なんてそうそうしないよね。でもあの子は逃げ出したかったみたい」



話すほど、あの時のことを思い出す。

眼鏡で、リュックを抱えた、家出少年。



なんでいつまでも忘れられないのか……まぁ記憶に残るほど衝撃的だったとしか言いようがない。



「その時のこと、ここに来るといつも思い出すの」
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