†captivity†(休載)
「……」
「……」
……話さなければよかったかもしれない。
沈黙が少し怖い。
ムダに恥ずかしい。
灯くんを見ると、黙ってあたしの話を聞いていた。
ただあたしに視線を送る。
無表情で。
それがなんだか……切なく見えた。
「和歌」
「なに?」
「それ、和歌の初恋ってこと?」
……時が止まったように、静かに衝撃を受けた。
初恋……なんて、考えたこともなかった。
だってほんの数十分の出来事だ。
ただ彼と会ったことが事実で、忘れられなくて。
いつまでも忘れられなくて。
でも彼の……透明で暖かいイメージの名前は、どうしても思い出せなくて。
それがまた、心に引っかかって、悲しい。
悔しい。
「和歌、ただの友達に対して、そんな複雑な顔は出来ないよ」
ストンと、なにも引っかかることなく、灯くんの言葉が胸に響いた。
このなんとも言い換えられなかった気持ちは。
どうしても、彼との関係を友達で留められなかった気持ちは。
「初恋……だったのかな」