†captivity†(休載)

──拉致



あの告白の次の日、あたしは灯くんから逃げ回っていて、結局話をすることはなかった。

灯くんもあの日以来緒方先輩の特別教室に来ることもなかった。

うやむやになったまま時間が過ぎ、気付けば6月に入っていた。













「和歌!」


朝の時間、そう呼びかけられて振り向けば、奏多くんがあたしを呼んでいた。

この1ヶ月でずいぶんと慣れてくれていたらしく、普通に彼の声が聞こえる音量になり、それにあたしは慣れていた。

信頼が生まれたことは幸せなことだ。



「どうしたの?奏多くん」



そう聞くと、奏多くんは教室を見渡してから……ドアの陰に隠れた。

あたしもその行動に周りを見渡してみると、彼の声は教室の半分には届いていて、あたしたちは注目を浴びていた。



それは男の子が女の子を呼ぶことに対しての好奇心だったり、普段はめったに人前で声を出さない奏多くんが大声を出したりとかだと思われる。

思わずあたしまで照れてしまった。
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