†captivity†(休載)
「今はちょっと会いにくくてね」
「……僕?」
「違うよ違うよ、緒方先輩とか……ちょっとだけ時間置きたくて」
奏多くんは眉にシワを寄せて子犬のような瞳を向けてくる。
マジ可愛い。
天使。
「奏多くんだったら大歓迎。心配かけちゃってごめんね」
ふるふる。
奏多くんが首を振る。
なにも聞いて来ないけれど、納得していない顔をしている。
「灯くんからは……聞いてないの?」
「……なにも」
「そっか」
キーンコーンカーンコーン
チャイムの音が廊下に響き渡った。
「ごめん奏多くん、教室戻らなきゃ」
あたしはタイミング良く鳴ったチャイムを理由に、気まずい空気から逃げようとした。
コクリ、奏多くんは頷く。
「またね!」
そうあたしが言うと、手を振ってくれた奏多くんに、あたしも手を振って、教室へ戻った。
灯くんの席を見ると、彼はいつの間にかそこに座っていた。
この前の告白は夢だったのか……そんなことを考えるほどなにもなかったし、なさすぎて逆にそれが現実だと告げていた。