†captivity†(休載)
そして放課後
あたしは緒方先輩に拉致されていた。
「手を放していただけませんか」
「だめだ」
「なんでこんなことするんですか」
「もう我慢ならねぇ」
「なんなんですかこれ」
「黙ってろ」
約一週間ぶりに訪れた……というよりは拉致だけれど、緒方先輩特別教室には、あたしたち以外の誰も来ていなかった。
ことは昼休みにまでさかのぼる。
今までほとんど空気だった友達「すずちゃんとみくちゃん」とお昼を食べようと席を立った時だった。
視界の端に、見慣れたメガネを捉えたような気がした。
実際に二度見してみるとそれは気がしただけではなくて、確実に実態としてそこに存在していた。
何をしに来たのか……目的はあたしか灯くんかの二択だろうけれど。
鬼畜メガネこと東先輩があたしを無言で睨みつけていたのだ。
あたしは見なかったふりをして座り直した。
けれどそんなことの意味もなく、珍しくずかずかと教室に足を踏み入れてきた東先輩に、クラス中が恐怖した。
なによりあたしが一番びびっていたことだろう。