†captivity†(休載)


靴を脱ぎ終えてしまった。

とりあえず玄関にいこう、そうしよう。



次の行動で時間稼ぎしようと……あわよくばそのまま帰ってしまおうと思っていたことがバレたのか、あたしが立ち上がると緒方先輩が行く手を阻んだ。



「どこ行くんだよ」

「……靴、置いてくるだけですってば」



ようやく口を開いた緒方先輩に、少し安心する。

ムダにハラハラさせやがって。



「俺が置いてくるから座ってろ」



そう言って緒方先輩はあたしの靴を攫って玄関へ行った。

これは一体優しさなのか、それとも逃がさねえってことなのか。

……どうせ逃げられもしないから、とりあえず座っておいた。



靴を玄関に置いた緒方先輩が戻ってくると、いつものようにあたしの隣にドシンと座った。



「緒方先輩」

「あ?」

「向かいのソファー、空いてますけど」

「そうだな」



……奴は動く気はないらしい。

どっかりと隣に座ったままなにもしない緒方先輩。

もちろんあたしは今日の緒方先輩がちょっぴり怖いからなにもしない。



そして時間だけが経っていく謎空間。


< 229 / 392 >

この作品をシェア

pagetop