†captivity†(休載)


「アイツは、お前のなんなんだよ」

「知歌は──」

「そんなにアイツに助けられたいのか?」

「だから、緒方せんぱ──」

「俺は悪役かよ」

「先輩聴いて──」

「お前は、俺が嫌いなのか?」



怒りで気が動転している緒方先輩には、あたしの声が聞こえないようで。

でも、ここで止めないといけないと、あたしの心が騒ぎ立てた。



恐怖はある。

けれどこのままではいけないから。



すみません、緒方先輩。


あたしはそのままの態勢で緒方先輩の両頬をバシンと叩いた。



ビクッとして、目を見開く緒方先輩の口からは、もう言葉は出て来ない。



そしてすかさず言った。



「緒方先輩は意地悪で、俺様で、なにするのか予想も付かないわけのわからない人だけど!」

「な……!?」

「でも嫌いじゃないです!」



不思議と、迷いはなかった。



「奏多くんを助けてくれました。東先輩のことも。実は不器用で優しい所もちゃんとあるって、あたし知ってるから」

「……」

「だから嫌いじゃないです」
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