†captivity†(休載)
あたしは叩いた手のまま、緒方先輩の頬に手を添えている。
大人しく、ちゃんと聞いてくれる。
大丈夫、この人はちゃんとわかってくれる。
そんな自信があった。
「それに、知歌があたしの何なのかなんて、とっくに知ってると思ったんですけど」
「は……?」
あたしがそう言うと、本当に分かっていないような顔をした緒方先輩。
あれ、本気で気付いてなかった……?
「奏多くんには先に話してあったし、緒方先輩が以前からあたしを知っていたなら知歌も知っているだろうと……思って」
「奏多?聞いてねーぞ」
去年、知歌はちゃんと学校行ってた……よね?
あたしとは別々で家出てはいたけど。
それに、記憶したことを忘れない緒方先輩だったら、知らないはずがないと、本気で思っていたから、言う必要はないと思ってた。
だって、同じ家から出てくる、同じ年くらいの男と思えば、兄か弟と思ってもおかしくないでしょ?
「本当に見たことないですか?知歌の事」
「見てねぇ」