†captivity†(休載)
何度も何度も夢に見た。
何度も何度も、彼を呼んだ。
その度忘れて、何度も何度も繰り返した。
あの日の彼以外、あたしの前に『シン』という男は現れていない。
唯一、この男『緒方心』だけだ。
そして彼は 『思い出せ』とさんざん言っていた。
子供のころに可愛い弟と紹介したことも、覚えていた。
これ以上に何があるというのだろう。
もう、何の迷いもないじゃない。
間違いない。
彼は、『あの』心くんなんだ。
捕らわれていた記憶の鎖が、パキリと音を立てて崩れ落ちる。
溢れて蘇る、記憶の欠片たち。
ぽろぽろ流れるナミダは、喜びか、悲しみか。
いや、ただの感動かもしれない。
ココロが震えたのかもしれない。
「おま、どうした、ちょ……わ、悪かっ――」
「シンくん」
「――っ……は?」
思わず呟いてしまった名前。
慌てて口を隠したところで、もう遅い。
「すみませ、ちょ……間違っ」
「もっかい」
「……え?」
彼は言った。
「もっかい呼んで」
「……」
なぜか、胸が高鳴った。