†captivity†(休載)
「い、嫌ですよ。ちょっと間違っただけです」
「そんな間違い方なんてねーだろ」
確かに、彼を思い出さない限り、あたしの口から名前なんて呼ばなかっただろう。
あくまで先輩だし。
でもポツリとこぼれ落ちたその音は、緒方先輩に届いてしまった。
そして、彼は確信したことだろう。
あたしが、あの日、あの瞬間を、ようやく思い出したこと。
……そしてそして、ちょっと、ふと、思い出したことがある。
確か、1ヶ月で思い出せと言われていたような気がする。
そして、思い出さなかった罰ゲームが、なんかとんでもないことだったような気がする。
でも、かろうじて今、あたしが思い出した段階では、1ヶ月経っていないような気がする。
……よね?
なんだか不安だけれど。
確か、彼らと会ったのはゴールデンウィークのすぐ後だった気がするから……。
あれ。
「なに考えてんだよ?」
気付けば、再び迫ってきていた緒方先輩。
ヤバい、今日、あれ、何日だったかなぁ?