†captivity†(休載)
冷たそうに見えるけど、いつもどこか温かくて、あたしたちを見守ってくれている。
みんなの気持ちを考えた上で、最善の対応をしてくれる。
ただ、わかりにくくて、ずっと一緒にいる人じゃないと本当の緒方心は見えなくて。
暴力的だと聞いたことはあったけれど、そんな暴力この一か月で一度もなかった。
今ならわかる、ただ自分のことより受け入れた相手のことを考えてしまうこと。
その結果恐れられる存在になって、誰もが噂に惑わされて、近づけないこと。
彼は誰も傷つけたことはないのに。
なんだ、あたしこんなに緒方先輩のこと知ってたんだ。
ただ、あたしが自分で否定していた。
ただの先輩であって、奏多くんの恩人でこのグループの中心人物だと、ただそれだけなんだと、意識から外すようにしていた。
でも実際は、意識から外すように意識していたのだから、結局は最初から意識していたのだろう。
あの特別教室に行った日から。
『緒方心』と、その名前を聞いた時から。
知歌と緒方先輩、あたしはどちらを優先するべきなのだろう。