†captivity†(休載)
だって、俺たちの中で『家出』なんて言葉は出たことがない。
したいと思わないし、する理由がないから。
とかそんなことどうでもよくて。
家出少年にであったからこんな状態になったとかわけがわからないよ。
「何があったの、和歌」
「……うん、それがね、」
そこで、和歌が出会った少年のこと、『シン』という名前、彼が苦しそうだったこと、それでも和歌と話した後には帰っていったことを聞いた。
「というわけで別れ際に手をふったのでした」
「……それって」
「確かにまた会うのは難しいかもしれないけどね、でも……会いたい」
そう口にすると、両頬に両手を当ててポカンと再び空を見始めた和歌。
この状態を恋と呼ばずしてなんと呼ぶ?
俺はこの時、和歌の初恋を知った。
そんなこと、教えてやらなかったけど。
でもその人に会ったというのはその一回きりらしく、その後名前すら忘れ、和歌の中にも印象としてしか残らなかった。
ザマァ。
……なんてクソガキ時代が俺にもあったのだった。
いや、もしかして俺のせいで記憶が上書きされたせいかもしれない。
この日を境に、二人でずっと一緒という考えが崩れ始めた。