†captivity†(休載)


「奏多くん、一緒に帰──」

「和歌には頼み事があるから」


静かに、囁くように、奏多くんの言葉が響いた。



「頼み事……?」



そう聞き返すと同時に東先輩が教室を出て行くのを目で追うと……。



「ケリ、つけろ」

「……はい」



東先輩が灯くんとすれ違って出て行った。



あの日以来、この教室には来なくなっていた、灯くん。

目も合わせず、逃げ回っていたあたし……いや、灯くんもそうかもしれない。

お互い、逃げていた。



その灯くんと目が合ったのは、本当に久しぶりで。

彼の目は、何かを決意しているように、真剣な瞳を向けていた。



「和歌、灯とちゃんと向き合って話してあげて」

「……奏多くん、それって」

「僕も行くね」



あたしの言葉を最後まで聴かずに出て行った奏多くん、それに東先輩。

この教室に残されたのは、灯くんとあたし、二人だけ。

静かな廊下、静かな教室。



「和歌、少しだけ、話をしよう」



大体の話の見当はつく。

告白のこと、かな。
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