†captivity†(休載)


少しでいいの、気まぐれでも。

なんでこんなに必死なのか……多分あの二人への対抗心も含まれてると思うけど。

それだけじゃなくてね、きっと、あの日、あの時だけ出会った男の子に、リンクしちゃったんだ。

共通点なんて可愛いってだけなんだけど、むしろメガネは東先輩と共通してなくもないけど、それでも、あの笑顔が忘れられなくて。



奏多くんの笑顔、もっと見たいって、思ったんだ。



奏多くんの視線は、東先輩、緒方先輩に移り、あたしと差し出した手で止まる。

少し、緊張。



「いってきても、いい?」



しっかりとした声が、辺りに響く。

いってきても、ってことは……。



「行きたいなら行けよ」

「奏多が揺らぎ始めたか。子離れも早いよ、シン」

「あー、マジか」



奏多くんは立ち上がった。

あたしの手は宙ぶらりん……だけどまぁ、いっか。

まだ踏み込むには早いんだ、きっと。



「行ってきます」

「おー」

「行っておいで。嫌いなところ、ちゃんと見つけてくるんだよ?」



……相変わらずだな、東先輩。


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