†captivity†(休載)


あたしたちは教室を出て、その辺にある特別教室を覗いてみた。

音楽室、美術室、パソコン室。

いろんな部屋があって、あたしたち一年生は、まだ使ったことのない教室ばかりだ。



奏多くんとの距離は、50cmから縮まることはなくて、それが心の距離と同じなのかと思うと、少し寂しかった。



「ねぇ、奏多くんは何組なの?」



廊下を歩きながら、ふと雑談。

授業によって、合同授業もあるから、もしかしたらいつか一緒に授業を受ける日がくるかもしれない。



「……ん」



今のは数字かな?

よしよし、段々パターンが見えてきたぞ。



「……、さん?よん?」

「さ」



三組らしい。



……なんだろう、今あたしなんだか謎解きした気分だった。

奏多くんとの会話はまだこの程度しか出来ない。

これは先が長いな……。



「あたしは二組だよ。お隣さんだね」



あたしが笑うと、奏多くんも笑って、コクンと頷いてくれた。



あぁ、かわいい。

マジ天使。



この辺りの教室は、たまに使う。

そろそろ特別教室巡りも飽きてきた。



「ねぇ、中庭の方、行ってみない?」



あたしはそう提案した。

コクリとまた頷いてくれる奏多くんと、玄関へと向かう。
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