†captivity†(休載)
「奏多はいい」
むせ終わったのか、心くんはあたしを数秒見つめてから、奏多くんに視線を移す。
「信頼してるのもあるが、互いに大切な友達付き合いをしてるのは見ていてわかる」
そう心くんが言えば、奏多くんもふわりと笑ってくれる。
奏多くんまで、一切迷いなくあたしとこれからも付き合う気でいてくれているようで……その信頼関係に、単純に驚いた。
「心から……怖がるなって、前から、言われてた」
そう、言葉にする奏多くんの瞳には、本当に迷いが見当たらなかった。
奏多くんは……元いじめてきた人たちに対して『僕をきらいな人たち』と言っていた。
それは奏多くんの考え方の特徴であり、つまり例え一見他人が悪いことだとしても、自分が悪かったことだと思い込んでしまうところがある。
しかし今、彼からそんな気持ちは全く感じられないのだ。
それはきっと……心くんだ、彼の影響だ。
恐らくこの話に関して、既に心くんと奏多くんで話してあって、結論が出ているのだろう。
そうじゃなければ心くんだって視線で奏多くんの言葉を促さないだろうし、奏多くんもすんなりと答えられていなかったはずだ。
「躊躇ったら、僕は、逃げちゃうから。信じてるから、大切なものからは、逃げなくていい、って、心が……」
「そう話したの……?」
「ココロのリハビリ。あと……大事な友達は、大切にしないといけないって」
少し潤んだ眼をしている奏多くんは、過去のことを思い出してしまったのだろうか?
それとも……その支えてくれる優しさに、ココロが揺さぶられたのだろうか。
確かに、奏多くんは逃げてしまうだろう。
絶対的な信頼を受け取れない限り、自分が悪いことをしているかのように感じてしまう。
自分が加害しているという意識が先に出てしまう。
実際は自分が被害者であったとしても、その思考回路は根付いてしまっている。
心くんもそれを理解している。
だからこそ、先にこの話は二人の間で既に話されていて、躊躇うなと、背中を押してくれていたのだろう。