†captivity†(休載)

──特別な日



心くんと結ばれたその週末、ことは急に起きた。



休みの日の朝、のんびりと起床したあたしは空腹感に突き動かされてリビングへ向かう。



「おはよう和歌」



そこに、いつも休日はあたしより遅く起きてくるはずの知歌が、にこやかに座っていたのである。



「……お、おはよ?」

「ちゃんと起きてくれて良かったよ、和歌」

「……はい?」



我が弟の言葉が、寝起きの頭の回転の遅さを除いても、理解が出来ない。

なにが良かったというのか?

なぜそんなに爽やかにこやかなのか?



「ごはん食べたら、出掛ける準備してね」

「……おでかけ?」

「あ、そうそう、和歌は今日コレに着替えるんだよ」

「……え?」



そう、突然言われて出された服には、少々見覚えがあった。

これは、まさか。



「茅ヶ崎奏多とデートしてた時に、和歌に頼まれてた服」

「え、なんで、今更……?」



というか、今の今までこの服の存在を完全に忘れていた。



「なんでって……東悟からの指示だから?」

「……なんで東先輩!?」



どうやら朝からのこの騒ぎには奴が絡んでいるらしい。



「靴は玄関に置いてあるから。あとお昼前には迎えが来るからね。朝ごはんは冷蔵庫に入ってるからレンチンしてって母さんが」

「なんで知歌があたしの予定管理してるの!?」



優雅に紅茶を飲んでから知歌は、あたしにおいでおいでと手をこ招く。

とりあえず一度落ち着いてイスに座る。

いや、答えてよ、確かに嫌な予感しかしないけど。



「昨日ね、メールが来たんだ」



そう言ってケータイを操作してから画面をあたしに向ける。



From:東悟

明日の昼前に、迎えに行くから
それまでに、君の姉が奏多と出かけた時買ってた服に着替えさせておいて








「とりあえず、逆らわない方がいいかなって思って」



さすが我が弟である。

危機回避に至っては飛び抜けて優れている。
< 329 / 392 >

この作品をシェア

pagetop