†captivity†(休載)
ふと、あのデートした日に服屋さんで知歌とばったり会った時のことを思い出した。
そういえば、中途半端に知歌に任せて支払いもなにもかも忘れていた。
あまりにもその後がドタバタと過ぎていったからなぁ。
なんたる失態。
「知歌、着替えるのはいいけど、洋服代……」
「先輩持ちだよ」
「……え?」
さらり、そう返ってきた言葉に一瞬思考が停止した。
先輩、持ち、とは。
「もともと東悟と茅ヶ崎奏多二人の計画に着飾った和歌が含まれてるから、和歌から服代請求するつもりはないって」
……なんと。
まさか弟と先輩の間でそんなやりとりが行われていたとは……いつの間に。
「え、ホントに?いいの?」
「いいんじゃない?和歌と服一式まるごと先輩へのプレゼントなんでしょ?」
あたしは品物じゃないぞ。
ジト目で見たけれど知歌は目をそらして朝ごはんを再び食べ始めた。
もう話すことはないらしい。
……ん?
なぜあたしがプレゼントの一部になっているのか?
疑問が残ったけれど、知歌を見ていたらあたしも朝ごはん食べたくなってきたので、一旦考えることをやめた。
「わかった。今日一日くらいプレゼントでもなんでもなってやるわよ」
あたしはため息ひとつついてから、プレゼントの服を自分の部屋へ持っていった。
朝食を食べ終えた後、出かける準備をするべく支度を始める。
知歌から受け取った服を広げると、その可愛さにどんよりとしていた気持ちが、少し浮いた。
七分丈の白いのプリーツのブラウスで、胸元に赤いリボンがついていて可愛い。
それにスラリと細く見せてくれる八分丈のサブリナパンツ……マジか、パンツにしたのか、知歌。
靴はどうやらパンプスのようで。
一通り着終わり靴も確認したあたしは、変なところがないか知歌に確認してもらうため、見せに行った。