†captivity†(休載)
「うん、イイ感じ」
知歌は親指を立てて「グッ」と言った。
「緒方心、喜ぶといいね」
「うーん、どうだろうね」
正直、自分がプレゼントだと言われたところでプレッシャーしかない。
これで本当に喜んでくれるものなんだろうか……少し不安もある。
というか、なぜ彼らはプレゼントを用意したんだ?
なんの為のプレゼントなんだ??
言われるがまま従っているけれど、理由が明かされていないままだ。
プレゼントということは、何かお祝いとかイベントとか記念日とかなのか?とも思うけれど、あたしにおめかしして服を着せるイベントって一体なんだ??とも思う。
まさか……と頭の片隅に浮かんでくるイベントを、いやぁ、まさかまさかぁーと振り払う。
だってその場合、あたしはプレゼントを用意していないのだから。
というか、もしお祝い系の何かだとしたら、あたしだけプレゼント用意していないということになるじゃないか。
何を企んでいるのか教えられることなく突発的に決められたのだとしても、少し気が引ける。
そういえば、もう月の半分が過ぎた。
雨の日が続く梅雨真っ只中の15日。
お気に入りの傘が使えるから、梅雨でも嫌ではない。
……15日?
ふと、頭の中を掠めたそのワードに、記憶の中の何かが引っかかる。
15日……そういえば東先輩に空けておけと、いつの日か言われていたような気がする。
空けておくも何も、勝手に予定を組み入れられていたけれど、今日がその15日だと気付いてストンと腑に落ちた。
軽く化粧をして、居間で紅茶を飲んでホッと一息ついていると、ついに玄関のチャイムが家に響き渡る。
どくん、どくん、変に緊張している自分の胸に手を当て、玄関へと向かった。