†captivity†(休載)
玄関を開けば、その先にはアイボリーのTシャツにジーンズ、濃い青のサマージャケットを着こなした心くんが、顔を反らして立っていた。
か、かっこいい……似合う……。
さらに人差し指でポリポリと頬をかいている姿から可愛さまで兼ね備えている。
か、かわいい?
照れてる?ねぇ照れてるの??
思わず口元を手で押さえながら歓喜に打ち震える。
外へ出る前から、ダメよ和歌、耐えて、でもにやにやしちゃう!!
すると、スッと視線がこちらに動き、数秒。
「……よう」
「え……あ、はい、どうも」
どうしよう、たどたどしくなってしまう。
視線をそらしてソワソワしてしまう。
こういう関係は初めてで、どうしたらいいのかわからないのだ。
なんだかくすぐったい。
「いつまで玄関先でイチャついてるつもり?」
心くんの背後……あたしの死角に居たらしいその聞きなれた声が、耳に届く。
もしかしなくても、この声は。
「東先輩もいるんですか?」
ひょいと玄関から一歩出て、その姿を確認する。
そこには腕を組んで立っている東先輩と、隣には手を背中で組んで微笑む天使……いや、奏多くんがいた。
「和歌かわいい」
「……ごちそうさまです」
はっ……思わず言葉の使い方を間違えてしまった。
東先輩の怪訝な表情が、あたしの邪な心にグサリと刺さる。
「なんか……今日プレゼント側らしいあたしの方が得しているようですみません!!」
いけない、落ち着こう、ひっひっふー。
違う、これ出産の時のやつだわ。
「和歌」
心くんの、柔らかくて心地のいい落ち着いた声が耳に届く。
その声に導かれるように見上げると、愛しい彼の手が頭の上に乗った。
柔らかく撫でてくれるその手が心地いい。
「服、似合ってる」
その一言は、奏多くんに言われた時と違って、胸の中に甘酸っぱさがジワリと広がった。