†captivity†(休載)


そんな奏多くんの姿を見て、知歌は少し考えるように手を顎の下に付けると



「そうだったんだね。和歌がいつも君の料理の話をしてくるから、ちょっと気になってたんだ」



そういえば、家族にはいかに奏多くんが料理上手で可愛くて可愛くて可愛いかを、語るに語り尽くしていたような気もする。



「和歌が……?僕の話を?」

「いつものようにしてるよ、ね。先輩二人の話はあまり聞かないけど。のろけてもいいんだよ?和歌」

「そ、そ、そんな話とかしないもん!!」



奏多くんの話なら、その行動ひとつひとつが可愛くてずっと語っていられる。

でも先輩たちの話は、なんというか……うまく表現ができない。

好きなとこもあるし、意地悪なとこもあるし、まだ知らないところだっていっぱいあるし……。



「ほーう」



隣から、そんな落ち着いた美声が聞こえた。

そこに居るのは、もちろん心くんで。



「奏多の話はして俺の話はしてないのか」

「え、いや、別にそんなわけじゃ……」

「じゃあ今日は話題になるようなことしてこないとな」

「なんで張り合おうとしてるんですか!!」



プイっと顔を反らせる心くんは、どうやらあたしが家で彼氏様の話をしてこなかったことが気に入らなかったご様子。

別に、ちょっと奏多くんの話の方がフィーバーしやすいだけだもん。

そんな彼の姿を見て、知歌はくすくす笑っている。

なんだかむずがゆい気持ちになってくるのはなぜだろうか。



「うん、報告楽しみにしてるよ、和歌」



なんとも反応に困る。

あたしこういう甘い感じの話は慣れてないんだから、困る、恥ずかしい。



「きょ、今日はどこに行くんですか!!」



なので早急に話題転換に走る和歌です。



「あぁ、お前魚好きか?」

「……?食べるんですか?」

「……いや、見る方」



和歌はとんでもなく恥ずかしい勘違いをしてしまったような気がします。

東先輩が鼻で笑ったことを和歌は見逃しませんでしたよ!!



「み、見るのも好きです!!水族館ならそう言ってください!!」

「悪い、言い方が悪かったな」



ぷんっと恥ずかしさで拗ねているあたしの頬に手を当てた彼は、その手をすくい上げるように顔を上げさせ、視線が絡まる。



「水族館デート、行くぞ。和歌」
< 334 / 392 >

この作品をシェア

pagetop