†captivity†(休載)
「……ふぁい。」
思わず、気の抜けた返事をしてしまった。
でーと。
デート……?
……デート!!!!
脳の理解に辿り着くまでに時間がかかってしまった。
デートなんて、友達や知歌とならよく言う単語だ。
でも実際恋人同士での本格的なデートという体験はなくて……というか恋人自体がいなかったものだから、その言葉の威力が凄まじい。
奏多くんとだってデートしたよ?したけども、またあの時とは別枠なのだ。
「お前緊張してんの?」
「……突っ込まないでください。こういう、ちゃんとしたのは経験ないんです」
「まぁ俺も同じだけどな」
そう言って、掬うように手を重ねてきた彼は、その手を指の間に絡める。
それが当たり前かのように、優しい眼差しを向けて、手を引くのだ。
「いくぞ」
「ふぇ?」
流れるように連れ出されるあたしの後ろでは、彼らが手を振る。
東先輩はすました顔で腕を組んでこちらを眺めているだけだけど。
「いってらっしゃい、和歌」
「気を付けてね」
和やかに手を振る奏多くんと知歌。
え、待って?付いて来ないの?
そこの二人はフルーツタルトを渡しに来てくれただけなの?
そんな混乱の眼差しを東先輩へと向けると。
「せいぜい俺たちのために心を喜ばせてきてね、バースデープレゼントさん」
そう、返ってきた。
ばーすでー……バースデー!!?
「え、まって!!?え!?」
「さっさと行け」
にこりとした満面な笑みで命令してきた東先輩は、もう知歌に話しかけていてこちらと会話する気はないようで。
「心くん……誕生日?」
「あぁ。祝え」
つまり、あたし自身がプレゼントにされているというわけで。
つまりあの時奏多くんと買いに行った服も、この誕生日プレゼントの一環のわけで。
二人は既に心くんにプレゼント(和歌)を渡したようなもので……。
どうしよう、チラリと頭の片隅で考えてはいたことだけれども。
あたし彼のプレゼントを用意していないのですが!!!(和歌的重要ポイント)