†captivity†(休載)


プレゼントをさり気なく買うシュミレーションを、あーでもないこーでもないと考えているうちに、門に着く。

そこには黒のセダンが停まっていた。



「この車で行く」

「……はい?」



脳内では、電車でゆらゆら揺られながら、お外綺麗ねー、あははうふふの高校生同士のらんでぶー☆なんて想定してたあたしにとって、これは由々しき事態である。

だっていつも乗る電車なんてすぐそこなのだ、そんな何十分と離れた距離にある訳じゃない。

近くにある水族館も、駅からそう遠く離れている訳でもない。

当然のように電車を使うと思っていたのだ。



なんの心構えもなく、彼氏様の家の車で(?)行くなんて想定していなかったし、手土産とかないんだけど!?

一人暮らしでしょう!?

わざわざ呼んで、来ていただいたの!?



そうこうしているうちに心くんは、車の後部座席の扉を開いて待っている。



「あの……」

「どうした?」

「お、送ってくださる方、とは……」



恐る恐る、車に近付く。



「あぁ、ババアんとこの運転手だから、気使わないでいい」



運転手さん……?

はっ……そういえばこの人、理事長子息だった!!

ということは理事長の運転手してる方……?



「まぁ、乗れ」

「お、お邪魔します…」



その運転席にいる40代くらいのおじさんは、こちらを見てニカッと笑う。



「いやぁ、坊ちゃんが追い求めてたお嬢さんとご対面出来る日がくるとは」

「へ……?」

「余計なこと言うなよ」



運転手さんにそう言いながら、心くんも乗り込んでドアを閉める。



子供の頃に一度会っただけとはいえ、彼の関係者は片っ端からあたしのこと知ってるな。

なんだか、またむず痒い。

このご様子だと、もしや家中に知られているのではないか?



「先輩そんなに家で言いふらしてたんですか……」

「……覚えてねぇ」



絶対嘘だ!!!!
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