†captivity†(休載)


そもそも彼がいつものメンバー以外と話しているところが既にレアなのだ。

学校では特別教室以外で全然見かけないし、まぁ教室まで押し掛けてきたことはあったけどほとんど話さなかったし。

あぁ、でも理事長と話してる時は普段より増し増しで口悪かったなぁ……。



そんな心くんに、こんなにフレンドリーに話しかけている運転手さんは、昔から彼のお世話をしているのかもしれない。

彼の交友関係は見たところ、狭く深く、上辺の付き合いがほとんどないのだ。



「和歌」

「!はいっ」



突然振り返ってこちらを見た彼と目が合う。

すっと、手が温もりに包まれると、肩がピクっと反応してしまった。

緊張してるのが目に見えてバレバレで恥ずかしいことこの上ない。



「付き合わせて悪いな」

「え?」

「悟のことだから結構強引だったろ」








かつてあたしを俵担ぎで学校から拉致ったことすらあるあなたがそれを言いますか。








「強引さでいえば心くんとどっこいどっこいですよ」

「は?俺強引か?」

「誰よりも強引ですね」



そこ、顎に手を当てて考えないでください。

さっき運転手さんには横暴とまで言われてたでしょ、つい数分前ですよ。



とはいえ



「今日は誕生日なんですから」

「……」

「誕生日なら、あたしだってお祝いしたいので、今日のことはいいんです」



むしろ、新しい服で着飾って、フルーツタルトをいただき、彼らに見送られ、彼とデートなんて。

まるで、あたしまでプレゼントを頂いているような気分になってしまう。



「誕生日、おめでとうございます、心くん」



ぬくもりに包まれた手を、そう言って握り返す。

トクントクン、心地よく心臓を鳴らす音が、伝わってしまってないだろうか。

ちょっと手汗のことなんかも大丈夫かと心配したりもして。



そうして彼を見ていたら、また頭を抱えて顔を隠されてしまった。
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