†captivity†(休載)
それから10分程度だったけど、奏多くんとちゃんと『会話』が出来た。
それは大きな進歩だったし、なにより嬉しかった。
「和歌」
奏多くんの声で、名前が呼ばれた。
「なに?奏多くん」
あたしは返事をする。
優しく、優しく。
「お友達、なってくれる……?」
不安を含む声で、表情で、あたしを見てから、少し視線を落とす奏多くん。
人見知り……っていうのは、言い変えれば、人への漠然とした恐怖なのかもしれない。
それが奏多くんが言った『遠い世界』に含まれているのなら、あたしは悲しいと思った。
人はあたたかいものだと、知ってほしかった。
だから大丈夫だよ、大丈夫。
怖がらなくて、いいんだよ。
「もちろんだよ。あたしは奏多くんにスリスリするって目標があるんだから」
そう言うと奏多くんは、困った表情で、苦笑いを浮かべて、コクンと頷いてくれた。