†captivity†(休載)
どうやら売られはしないようなので、イヤイヤ顔をしつつもフォトスポットまでとぼとぼ歩いてくれる心くんと共に、撮ってもらった。
最初に撮るか?って聴いてきたの心くんなのに。
「では、当初の目的通り、私はここで一旦引きますので!」
「え?」
「遠くから見守っています!元々お邪魔しようとは思っていなかったので、存分にイチャイチャ楽しんできてくださいねー!」
そう言って彼女は人混みの奥へと消えて行った。
いや、見られてると知ってイチャイチャ出来るほど心強くないんですが!!
心くんはシッシッと言わんばかりに手を振っている。
かなりお気に召さなかったようだ。
「まぁ、誰かしら知り合いはいるだろう気はしてた」
「誰かしら、とは?」
「俺にトラブルがあった時、対応出来るのが和歌だけじゃ心許ねぇからな」
「……倒れた時運んだりとかは、確かに出来ませんが」
心くんはじっとあたしを見詰めてから、するりと手を繋いで、水槽へと導いてくれる。
「お前可愛いな」
「急すぎません!?どこにそんな要素が!?」
「トラブルっつって俺の体の心配してくれんのか」
「他に思い付かないですもん」
ヒラヒラと泳ぐ魚たちに歓喜しながら、写真を撮っていく。
かわいい、小さい可愛い、あ、カニもいる。
パシャパシャ。
「ふぐ!不遇なフグがいますよ!!」
「なんだそれ?」
「Twitterネタです、可愛いんです、イルカに遊ばれてるフグさんとかいるんです、ちょっとブームなんです」
「お前Twitterしてんのかよ」
そう、ちょっと食い気味に説明すると、肩を震わして笑われてしまった。
なかなかにレアである、純粋に楽しそうな心くんに、胸を打たれる。
なかなかに、うん、好きでしかない。