†captivity†(休載)


「まて綾愛、お前も乗るのかよ」

「ジジイの配下がいる場所に一秒だって居たくないもの。それに」



ぼーっと車に乗っている私は、思考が追いついていない。



「混乱させてしまってごめんなさい」



ふわりと重ねられた手の温もり、優しく目を合わせてくれる綾愛さんに、緊張した体がふっと和らいだ。

綾愛さん……安心、させようとしてくれている。



急激に、色んなことが起きすぎて、混乱した。

心くんのお父さんのことも……彼の幸せを嫌がっているとはどういうことなのか、理解も出来ない状態で。

理解を……したくないのかもしれない、うちはみんな仲がいいから、家族同士でなぜそんなことを、と。

うちとは別世界のようで……。



でも、それでも。

この混乱の中でも、悪いことばかりじゃ決してなかった。

綾愛さんが謝るようなことはない。



「あたしは……心くんとの初デート、とても楽しめました」



不安はあるけれど、間違いなく今日は特別な一日。



「あたしは、めいいっぱい楽しめたので大丈夫です。それよりも心くんは──」



彼が傷付いていないか、ちゃんと楽しめたのか、そっちの方が気になっていた。



「お前、ほんと……俺のせいでこんな状況になってんのに責めもしないのか」

「心くんのせいなんて、有り得ません。心くんはただ、一緒に出掛けてくれただけ」



彼のせいではない、彼の父が起こしているらしい状況だ、そこは間違えちゃいけない。

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