†captivity†(休載)
そう言われて振り向いていた顔を前方に戻せば、目の前に若干はだけているシャツが見えた。
若干はだけているのが気になる。
もう一つボタン閉めてほしい。
そう思って目の前のボタンに両手を伸ばし──手首を掴まれた。
はっ……あたしは今なにを……?
一瞬世話を焼きたい衝動に突き動かされていたみたいです。
顔を上げれば、真上に顔。
緒方先輩の、意外にも整っていたらしい顔が、無表情であたしを見下ろす。
いつも顔怖いから、気づかなかった。
威圧感は、相変わらずご健在のようで。
「テメー」
「……。閉めたく、なりまして……」
そういいわけをすると、盛大なため息をいただきました。
え、何で今あたし溜め息吐かれたの?
理由を聞こう思って後ろに居るだろう彼に振り向いた、のに。
「あれ、さっきの人消えた?」
「滝澤ならお前連れてきた直後にさっさと逃げた」
「え、ひどい」
教室を見回したけれど、そこに彼はいなかった。
別のドアから逃げたらしい。
そういえばあの人、滝澤くんていうんだ。
なんで緒方先輩が知ってるの?
学年違うのに、同じ教室のあたしよりも知ってるなんて……逆に今まで知らなくてごめんなさい、滝澤くんとやら。