†captivity†(休載)
いいや、とりあえず一回忘れよう。
そう思って、話題転換をした。
「奏多くん、そういえば二人とは中学から知り合いって言ってたよね?」
コクリ、頷く奏多くん。
「その時にもしかして、あたしに会ったことある?」
考えてみれば、二人だけで会ってたとは限らないじゃないか。
まぁ二人以上で会ってるのに抱擁したなんて事はないとも思うけれど。
奏多くんは首を振った。
会ってない、と。
「まだ思い出さないのか」
東先輩がニヤリと笑いながら言う。
目は相変わらず笑っていない。
それにあたしはイラり。
「東先輩はあたしを以前から知ってたんですか?」
「知らないよ。あぁ、見てたとしても、その平凡で普通すぎる顔なら気付いてなかっただけかもね」
その言葉を笑顔全開で言うのか、この鬼畜悪魔。
でもこんな毒舌を吐かれ続けていたら、逆に慣れ始めてきた自分がいる。
人間っておそろしいわ。
しばらく歩くと、気付けば見慣れている道で、もう家の近くにいる──って。
嫌なことに、気づいてしまった。
「東先輩」
「なに?」
「どこへ向かってるんですか?」