†captivity†(休載)


その子は可愛いけれど、少し瞳が冷たく見えた。

睨まれているような、観察されているような、そんな目を向けられて数秒。



「だれ?」



男の子の第一声は、透き通るような声で、辺りに小さく響いた。



「……あたし、わか」

「わか?」

「和歌って名前」

「そう」



また数秒、時は流れて、彼は口を開く。



「ぼくは、しん」

「しん、くん?」

「そう。ココロって書いて、心」



心くん、心くん、心くん。

心の中で、3回その名前を言った。



新しいお友達ができたら、忘れないように3回名前を心の中で言うの。

そうすると仲良くなれるって、ママからのおまじない。



「しんくんは、こんなところでなにしてるの?」

「なにも。和歌には関係ないでしょ」



そう言われて、少し心が寂しくなった。

少しだけ、悲しくなった。






< 5 / 392 >

この作品をシェア

pagetop