†captivity†(休載)
顔だけ振り向いて、緒方先輩に聞く。
「なんですか?」
少し、自分が緊張しているのがわかった。
心臓が、少しだけ、速い。
「和歌」
「なんですか」
「和歌」
「だからなに」
緒方先輩の目が見れない。
なんとなく彼の雰囲気から、目を合わせづらいって思った。
「呼べよ、俺のこと」
「……緒方先輩」
「下」
「え?」
「下、呼べ」
下、ということは……。
名前?
なんで名前?
「呼び方なんて、いいじゃないですか、なんでも」
「俺を思い出すヒントだとしても、呼ばない気か?」
ヒント……?
「俺はお前を和歌って呼んだ。お前も俺を名前で呼んだ」
「……」
「呼べよ」
名前は……知ってる。
でも、なんだかそれは、緒方先輩とは別物のような感じがして、呼びにくい。
緒方先輩は、あたしの中では緒方先輩だ。