†captivity†(休載)
──理由
昨夜、緒方先輩との会話を思い返していた。
彼の名前を、なぜか呼べなかった。
名前を呼ぶくらいなら、だれでも出来るのに。
朝ご飯の時も、支度の時も、考えていた。
緒方先輩が昨日の別れ際に言っていたイメージの話からすると、彼の『心』という名前はイメージとくっつけて覚えているらしい。
雰囲気とかかな?
や、でも、それにしても別人すぎるでしょう?
東先輩は性格で分かるって言ってたけど、イメージの性格と緒方先輩の性格が一致するとは思えない。
うぅん……モヤモヤする。
頭の中を悶々とさせて玄関を開けた。
そして閉めた。
すぐに閉めた。
無言で閉めた。
ピシャリといい音が響いたと思う。
「夢かな」
よし、起きようじゃないか。
そう思って目をつむり、起きろと三回唱えて、さぁ起きただろ。
もう一度玄関を開けても、全く景色は変わっていなかった。