俺がお前の生きる理由。(仮題)
しばらく声をかけていると、女の苦しそうな息は聴こえなくなり、だらっと体を俺に預ける。
「おいっ。」
心配になって顔を覗くと気を失っているようだった。
その時、ようやくガタンと音を立ててエレベーターが動き出す。
「え!?
生徒さん乗られてたんですか。
そちらのお嬢さんは大丈夫ですかい!?」
ヘルメットを被り、作業員らしい中年の親父が焦ったように声を掛けてくる。
「どけ。」
女を抱き上げ、エレベーターを出るとそのまま保健室へ向かう。
「・・・軽いな。」
そんな独り言を呟きながら女の顔を見た。
明るい場所で初めて見たその女の顔は、苦しそうな、何かに脅えているような表情を浮かべている。
だけど、
とても、
綺麗だった。