君が好き
自分が掴んでいた方の手。
こっちに来た時、
とっくに離していたはずなのに
なぜかつながったまま。
どうしてだろうと思って見てみれば
俺の手を加藤が掴んでいるのだ。
…どうした、加藤。
こんなことされたら
ドキドキするんだけども。
情けない思いを悟られたくないけど
でも、気付かれても仕方ないほどにドキドキは膨らんでゆく。
「会長といると、」
そんな中で投げられる言葉。
ヤバいって、加藤。
こんな至近距離で
そんなしっとり話されたら
俺、抱きしめちゃうって。
「いろんな世界が見えますね。」
「え?」
本当に眩しそうに景色を見る加藤に
なんだかこっちまで目を細めてしまった。
すっかり景色は夜景で。
だから、なにも眩しいものなんてないのに。
なのに加藤はずっと、ずっと遠くの方を眩しそうに見つめていて。
そんで、
握る右手も、ずっと、離さないのだった。