君が好き




「会長は?」

困ったように笑う加藤。

どうして?
なんでそんな困った顔をするの?



「うん、バイトばっかだよ。」

「え?受験生なのに」


明るく笑おうとして、
だけど失敗したように
崩れた笑顔を見せる加藤。

なぁ、どうして、
そんな顔するの?

なぁ、どうして
今日、会ってくれたの?



加藤。


好きなんだよ。



だから。
好きだから、都合よく解釈してしまいそうになるんだ。

自分勝手にやってしまいそうになるんだよ。



「そうなんだよ。
勉強、全然してなくてさ」

「…じゃあ、内部ですか?」

「かなぁ」


やっと、普通のテンポで話せるようになったところで
たどり着いた山の入口。






「ここですか?」

「うん、ここの頂上」



少しだけ不安な顔をする加藤。

「暗いの怖い?」
「…いや、全然」


悔い気味での答えは、
ほんの少し震えていて。

怖がってんじゃん。



思わず笑ってしまえば
加藤は怒ったようにこちらを見た後、
さっさと歩き出す。



「会長、早く」


…やっぱ怖いんじゃん。

思わず笑えば、やっぱり加藤は少し怒ったような顔で歩くのだった。




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