君が好き




「だからさ、笑っててほしいんだ。そんなの、俺の勝手なんだけどさ。」


こちらを向く瞳が揺れることにも少し慣れた。
そのぐらいにはずっと目を見ていたつもりだ。



「辛いのに、無理して笑おうとするんじゃなくて。
笑いたいときに、笑ってさ。
怒りたいときに怒って。
泣きたいときに、泣けばいい。

って、まぁ、いま笑ってとか言っちゃってるんだけどさ。」


苦笑すると加藤も少し笑ってくれた。


「…なに、それ」


ポロポロとこぼれる涙はそのままに彼女はポツリとポツリと話し出す。


「…泣いたら笑えって言うくせに。」

「うん」

「怒っても、会長は笑ってるのに。」

「うん。」

「それに、それに…」



「加藤はさ。」



目をこすりながら話す加藤。
黒くなった目の周り。

あぁ、化粧してたんだって、このときにやっと気づけるような鈍感な奴だから。

もしかしたら、加藤のこと傷つけてるかも。



それでも、どうしても聞きたかった。





「今、この町も楽しい?」





加藤の笑う理由は、
ちゃんと“今”になってるの?




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