君が好き




きょとんとした顔をするマモル。
一体何事かと首をひねってみれば
マモルもイヤ…といって首を振るだけだった。


「…なんでもね。」
「なんだよ。」
「いや、別に。」

なんだ、あいつ。
いつもはうざいぐらいに話し続けるクセに。


いつもと違うマモルに、少し、気を取られていた。

だから。
いや、だから、なんてわけじゃないと思うんだけど。

俺がどんなに神経を張りつめていたとしても。
たとえ、マモルと話していなかったとしても。

加藤のことを、ただ、真っ直ぐに見ていたとしても。



きっと。
現れていたんだ、あいつは。



















「3名様入りまーす!」

「いらっしゃいま…」
「よ!」
「やっほ!」









その声に、
俺の視線の先に居た人が、揺れた。








「…タカシ」

「よ!亜紀」





胸が痛む理由は。
目を覆いたくなる理由は。
耳を塞ぎたくなる、理由は。











わかるよ。
当然わかるよ。



俺は、加藤が好きだから。




だから。














「…なんで?明日って言ったじゃん」

「ん?亜紀が浮気してないかなぁって」







浮気ってさ。
なんだよ、それ。





「…ちょ、とりあえず座って。」




加藤は一体どんな顔をしているんだろう。
照れてるのだろうか。

彼氏が遊びに来て。
嬉しいんだけど、照れくさくって?



…なんだよ、それ。

俺は?
加藤。俺は?一体、どんな存在ですか。





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