君が好き
前を歩く二人の後ろからゆっくり歩く。
加藤とは電車方面が反対だし。
千田は、駅の近くに住んでて、電車は乗らない。
だから、駅まで行ったら一人になる。
…多分、今日が終わったら。
今日が終わったら、
もうしばらくは、加藤に会わなくなるだろう。
俺は受験生になって。
加藤も…。
加藤はもともと、
俺のことなんてどうでもよかったのかもしれないけどさ。
きっと、加藤も、
徐々に俺を忘れていって。
お祭りのことも、
屋上でのことも、
きっと、
星を見に行った時のことも。
加藤はきっと、忘れてしまうんだろう。
俺もきっと。
いつか。
この思いも。
思い出は記憶になって。
いつか誰かと話すんだ。
高校の時の、
ひと夏のこの恋を。
一目ぼれだったんだって。